特例財団法人における最初の評議員の選任について−Part1-
2006年9月29日

非営利法人総合研究所(NPO総研)
CEO兼主席研究員 福島 達也

■一般社団・財団法人法における評議員の選任方法について

 一般社団・財団法人法の施行後、現行の財団法人は、移行するまでに、今まで評議員・評議員会を置いていたか否かにかかわらず、一般社団・財団法人法に基づく評議員を置くための手続をとる必要があります。

 しかし、厄介なことは、今度の法律では、評議員の選任及び解任は、理事又は理事会が選任や解任をすることがまったくできないということです。なぜかというと、その趣旨は、執行機関(理事・理事会)が、自分たちをチェックするための評議員会のメンバーを選任するということは、被監督者が監督者を選任することになり、評議員会の執行機関への監督が十分に果たされなくなるものと考えられるからなのです。政府としても、以前、ある理事長が暴走して、その財団のお金を勝手に演歌歌手につぎ込んだり、自分の自宅の改築につぎ込んだりした事件以来、これだけは絶対に貫きたかったようです。

 これは、通常の財団法人にとってはとても迷惑な話です。今まで当然のごとく健全経営を心がけ、活動も充実してきていたとしても、評議員だけは、いわばあて職のような形で、選任していたところも少なくありません。ですから、理事会の意のままに業務に適する人材を評議員に選任していたのです。

 しかし、今度は、自分たち(理事)を選ぶ相手(評議員)を逆に選べないのです。さらに言うと、自分たち(理事)をやめさせることもできる評議員の選定に関われなくなってしまったのです。これでは、何かちょっとでも失敗すると、自分たちの首が飛んでしまう危険性があります。ついに、主従関係がまったく逆になってしまったのです。さあ困りました。ではどうやって評議員を選任すればよいのでしょうか。

 その選任及び解任の方法は、3つ考えられます。それは、@評議員会が自分たち評議員の選解任を議決する方法、A評議員選解任のための特別な選定機関を設置する方法(もちろん、その機関は一般社団・財団法人法第153条第3項第1号に反するような構成の組織は認められません。)、B外部の特定の者に選解任を委ねる方法(例えば知事が指名するとか)などの方法です。これにより、今までの理事会と評議員会の力関係は一変します。ですので、このあたりは、どのような評議員会にすべきか、誰がふさわしいか、私たち非営利法人総合研究所に是非ともご相談ください。

■現行の財団法人が一般社団・財団法人法に基づく評議員を置くには

 それでは、手続方法についてご説明します。まず、現行の財団法人は、新法の施行後、一般財団法人又は公益財団法人に移行するまでの間、一般社団・財団法人法の機関設計(評議員、評議員会、理事、理事会及び監事すべてを必置)に必ずしも従う必要はありません。もちろん、移行への準備等として法人が望む場合は、一般社団・財団法人法の機関設計にすることも可能です。

 現行の財団法人が移行するまでに評議員等を置く場合は、まず評議員等を置くこと、さらに、評議員の選任及び解任の方法を定款に定める必要があります。

 問題は、最初の評議員の選任方法です。現行の財団法人は新制度の施行前に設立されていますので、一般社団・財団法人法の規定によって設立した一般財団法人のように、設立者の意図を受け、最初の評議員の選任に関する事項を設立時評議員の選任に関する事項として定款に記載することは不可能です。

 そこで、現行の財団法人が最初の評議員を選任するには、所管官庁の認可を受けて理事が定めてよいことになっています。先ほど、被監督者が監督者を選任できないことを述べましたが、最初だけは例外としているのです。その代わり、その適正性や透明性を担保するために旧主務官庁の関与を認めることにしたのです。これにより、現在の理事会は、最初の評議員の選任だけに関わることができるのです。


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